PGC.Journal 愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコース   愛知学院大学歯学部同窓会

 

平成20年7月13日(日)13:00〜16:30
講師:矢坂 正弘氏
日歯生涯研修コード:0303

> 講演後記

 
  抗凝固療法中の患者における抜歯時には抗凝固療法を継続するか?中止するか?ということがいつも問題となる。中止すれば血栓・塞栓症、継続すれば止血困難という事態に直面するかもしれないからである。最近の文献調査や前向き登録研究によれば、ワルファリンを一時中止した際の血栓・塞栓症の発症率は約1%で、発症例の多くは重症であることが明らかにされている。ランダム化比較試験や多数の前向き研究でワルファリン継続下での抜歯の安全性が示されており、日本循環器学会のガイドラインには、抜歯時には抗凝固薬を至適治療域に管理し、抗凝固療法継続下で抜歯することが望ましいと記されている(Circ J2004;68(Suppl IV): 1153)。英国からは2007年に、歯科外科処置時の経口抗凝固薬管理ガイドラインが発表され、治療域ならば、経口抗凝固薬は中止すべきではないと注意が喚起されている(Br Dent J. 2007; 203:389)。
本邦ではランダム化比較試験はなされていないが、複数の観察研究が行われ、INRが3.0未満であれば抗凝固療法継続下での抜歯が可能と報告されている。しかし、2006年に実施した国立病院機構の医師と歯科医師を対象としたアンケート調査によれば、抗凝固療法継続下での抜歯の認識は、それぞれ35%と53%に留まっており十分ではない。今後とも医科歯科連携に基づく抗凝固療法継続下での安全な抜歯の基盤作りが重要である。
 
 
  1. 脳血管障害の動向
  2. 高齢者に多い非弁膜性心房細動
  3. 心原性脳塞栓症の病態と予防
  4. 抗凝固療法の実際
  5. 抗凝固療法中断のリスク
  6. 抗凝固療法継続下での抜歯の安全性
  7. 抗凝固療法継続下での抜歯の本邦における現状
  8. 医科歯科連携
 
 
1982年 熊本大学医学部卒業 熊本大学医学部付属病院研修医
  1985年  国立循環器病センター 内科脳血管部門 レジデント
  1988年  国立循環器病センター 内科脳血管部門 医師
  1993年  医学博士(脳梗塞に関する研究)
  1994年 

メルボルン大学オースチン病院神経内科 (PETと超音波による脳血流評価の研究)

  1996年 国立循環器病センター 内科脳血管部門 医師
  2000年 国立循環器病センター 内科脳血管部門 医長
  2005年  4月より現職(国立病院機構 九州医療センター 脳血管センター 脳血管内科 科長)
 
【所属】
日本内科学会(専門医、指導医)、日本老年医学会(専門医、指導医)、日本脳卒中学会(評議員、専門医、脳卒中治療ガイドライン委員)、日本神経学会(九州地方会世話人)、日本脳神経超音波学会(理事)「ガイドライン委員」 、日本循環器学会 学術委員会ガイドライン作成班@「心房細動治療(薬物)ガイドライン」(2006-2007年度改訂版)班員、A「抗凝固・抗血小板療法ガイドライン」協力員、International Stroke Society、日本血栓止血学会(評議員)、日本超音波学会 「頸部血管超音波検査ガイドライン委員」、日本栓子検出と治療学会(理事)「ガイドライン委員」、日本脳ドック学会、日本頸部・脳血管治療学会、九州脳神経・脈管超音波研究会 代表世話人

 
 
  1. 矢坂 正弘 ワルファリン抵抗性患者の治療 脳と循環 2008;13 : 67-71
  2. AGUILAR MI, HART RG,KASE CS, FREEMAN WD, HOEBEN MBJ, GARCIA RC, ANSELL JE, MAYER SA, NORRVING B, ROSAND J, STEINER T, WIJDICKS EFM, YAMAGUCHI T, YASAKA M: "Treatment of Warfarin-Associated Intracerebral Hemorrhage: Literature Review and Expert Opinion" Mayo Clin Proc 2007;82:82-92
  3. 矢坂正弘、岡田靖、井上亨、吉川博政、朔元則: 観血的な医学処置時の抗血栓療法の管理に関する研究.全国アンケート調査結果. Brain and Nerve 2007; 59:871-876
  4. 矢坂正弘: 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン 脳と循環2007;12:177-181
  5. Yasaka M, Naritomi H, Minematsu K: Ischemic stroke associated with brief cessation of warfarin Thromb Res 2006; 118: 290-293
 
 
平成20年7月13日に本年度第二回の講演会が開催されました。今回は国立病院機構 九州医療センター脳血管センター・臨床研究部 脳血管内科の矢坂 正弘先生をお招きして@医科に学ぶ医療連携の仕組み作りとA歯科医師に必要な投薬の知識習得をテーマに、「その抗凝固薬、勝手に止めれば悔い残す」と題して講演を御願いしました。

 現在医科では診療ガイドラインの策定が進み、主だった疾患別の標準治療が確立されています。しかし、歯科界においては歯科医師が抗血栓薬の術前調整に物申すはご法度という風潮があり、これがさまざまな脳卒中発作の遠因の一つになっているため、この問題を医療連携の一環として医科歯科全体で考えるべき課題である事を強調されました。ポストワルファリンの開発動向や九州地区における医科歯科連携の実情、各種抗血小板剤の特徴、医療裁判に備えた同意書作成などについても明快に講演され、安心で安全かつ安定した歯科医療を行う上で非常に参考になる示唆に富んだ内容でした。
 
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