●日時:2022年2月6日(日)9:30~17:00
●講師:斉藤 佳雄 氏
ここ数年来、「歯の破折」を主訴として来院される患者さんが増加している。その多くは、既に他院を受診され、『ヒビが入っているから抜くしかない』、『抜歯して、インプラントかBridgeになる』との診断を受けた後、
「抜かずに何とか治療する方法はありませんか?」との主訴で来院される方々である。
演者は1998年より破折歯根の接着・再植保存法に取り組み、破折した歯根を接着した後、再び口腔内に再植することで、充分に咀嚼に寄与している多くの臨床例を経験して来た。
今回は、それらの経験を基に、現在 主として取り組んでいる 非抜歯による破折歯 歯冠内接着保存法による様々な臨床例について、実際の症例を提示し、その具体的な術式についても詳述する。
歯を守る歯科医療の立場から云えば、破折歯を保存することで抜歯による両隣在歯を削るBridgeやインプラントを避けることが出来る。
何にも増して、元々あったご自身の歯で再び咀嚼出来るならば、患者さんにとってこれに勝る喜びはない。
私達は歯科医師として『歯を守ることが使命である』という事を常に忘れずに臨床に取り組みたいものだ。
患者さんは、抜く・削る・神経を取る歯科医療よりも、歯を守る歯科医療を選択して来院される。歯科医多難な時代を尊厳と誇りを持って生き残るために、私達は如何に歯科臨床に取り組むべきであろうか。
今回は、歯髄の保存法や矯正的歯根挺出法、40年以上のEndoの長期経過症例についても出来るだけ多くの臨床例を提示し、ご指導とご批判を仰ぎたいと思います。
令和4年2月6日(日)PGC講習会が行われました。
今回は講師として、DENTAL OFFICE斉藤歯科室 斎藤佳雄先生をお招きし、
「歯を守る歯科医療」
-抜かず・削らず・歯の神経を守る歯科医療-
演題にてご講演いただきました。
2月になって雪が降る寒さの日曜日、実出席、オンライン出席のハイブリッド開催で56名の受講生にて開催されました。
ご講演は、破折歯根の接着・再植保存法を応用することで、抜歯適応と思われる天然歯の咀嚼機能を再び回復させることができる事をご教授頂きました。歯の破折には様々な形態があり、症例に応じて、歯髄の保存法や接着・再着・固定に至るまで求められる知識と技術の範囲は広く、天然歯を活かすための歯根破折の接着・再植保存法についてご講演頂きました。
天然歯を生かすための矯正的歯根挺出法や天然歯ポンティックの臨床応用、重度歯周炎への対応等についても、臨床経過とともにご教授頂きました。縁下に及ぶう蝕歯根に対し、矯正的歯根挺出法を用い、最終補綴物のマージンをコア上ではなく、健全歯質上に設定できるようにする事で、天然歯保存を可能にし、抜歯やインプラントを避けることが可能となる事を示されました。
天然歯の歯根を切除し、両隣在歯と接着する天然歯ポンティックとすることや、ラミネートボンディングブリッジを活用することで不要な切削を行わず、3mixを応用することで抜髄を避ける症例を多数ご紹介頂きました。
また非抜歯による破折歯根の歯冠内接着保存法について臨床例と共に臨床術式についてもご教授頂きました。この術式は、従来の接着・再植保存法と比較して歯根膜の損傷を避けることができ、術後の患歯安定の為の固定期間が不要などの大きなメリットがある事を示して頂きました。
講習後の質問にもご丁寧にお答えいただき、大変有意義な1日講演でした。