第4回講演
歯科臨床45年の軌跡その2 歯を守る歯科医療
-抜かず・削らず・歯の神経を守る歯科医療-
●日時:2021年2月14日(日)9:30~17:00
●講師:斉藤 佳雄 氏
講師からのメッセージ
ここ数年来、「歯の破折」を主訴として来院される患者さんが増加している。その多くは、既に他院を受診され、『ヒビが入っているから抜くしかない』、『抜歯して、インプラントかBridgeになる』との診断を受けた後、
「抜かずに何とか治療する方法はありませんか?」との主訴で来院される方々である。
演者は1998年より破折歯根の接着・再植保存法に取り組み、破折した歯根を接着した後、再び口腔内に再植することで、充分に咀嚼に寄与している多くの臨床例を経験して来た。
今回は、それらの経験を基に、現在 主として取り組んでいる 非抜歯による破折歯 歯冠内接着保存法による様々な臨床例について、実際の症例を提示し、その具体的な術式についても詳述する。
歯を守る歯科医療の立場から云えば、破折歯を保存することで抜歯による両隣在歯を削るBridgeやインプラントを避けることが出来る。
何にも増して、元々あったご自身の歯で再び咀嚼出来るならば、患者さんにとってこれに勝る喜びはない。
私達は歯科医師として『歯を守ることが使命である』という事を常に忘れずに臨床に取り組みたいものだ。
患者さんは、抜く・削る・神経を取る歯科医療よりも、歯を守る歯科医療を選択して来院される。歯科医多難な時代を尊厳と誇りを持って生き残るために、私達は如何に歯科臨床に取り組むべきであろうか。
今回は、歯髄の保存法や矯正的歯根挺出法、40年以上のEndoの長期経過症例についても出来るだけ多くの臨床例を提示し、ご指導とご批判を仰ぎたいと思います。
講演内容
- 抜かず
(1)破折歯への対応 ―破折歯を抜かずに保存するために―
・破折歯根の接着・再植保存法
・非抜歯による破折歯 歯冠内接着保存法
(2)歯根挺出法 ―矯正的・外科的・自然挺出法―
(3)重症ペリオ症例への対応 ―重症ペリオを抜かずに保存する―
- 削らず
(1)天然歯pontic応用で両隣在歯の削去を避ける
(2)Partial venier Bridgeで天然歯質の削去を避ける
(3)深いカリエスも最大限 健全歯質を保存する
- 歯の神経を守る
(1)抜髄治療は過去のものだ
(2)深いカリエスから歯髄を守る
(3)外傷破折露髄歯の歯髄の保存
(4)患者さんは神経を抜く歯科医師よりも神経を守る歯科医師を選ぶ
- Endodonticの長期症例から
(1)根尖病巣を有する感染根管治療とその限界
(2)いわゆるEndo・perio合併症への対応
(3)根尖病巣は外科(抜歯)かEndo(保存)か外科的Endoか
(4)これはEndoで治りますか
- 医療倫理を問う
略歴
- 1972年
- 愛知学院大学歯学部歯学科 卒業
愛知学院大学歯学部 第一口腔外科 入局 助手
- 1975年
- 名古屋市千種区にて開業
- 1984年
- 名古屋市千種区歯科医師会
理事 副会長
- 1990年
- 歯学博士取得
- 1991年
- 愛知学院大学歯学部同窓会
常務理事
副会長
- 1993年
- 愛知学院大学歯学部同窓会
ポストグラデュエートコース実行委員長
- 1994年
- 愛知県歯科医師会
学術部 次長
調査室 次長
選挙管理委員会 委員長
- 2003年
- 日本歯科医師会 学術・生涯研修委員会 委員
- 2005年
- 愛知県国保連合会 審査委員
愛知県歯科医師国保組合 副理事長
愛知県歯科医師会 会務運営委員会
委員長
- 2008年
- 愛知県歯科医師会 会館建設検討委員会 副委員長
- 2009年
- 愛知県歯科医師国保組合 理事長Ⅰ期
- 2010年
- 全国歯科医師国民健康保険組合連合会(全歯連)
特定歯科検診 検討委員会 委員
- 2011年
- 愛知県歯科医師国保組合 理事長Ⅱ期
全国国民健康保険組合協会(全協)常務理事
全国国民健康保険組合協会(全協)中部支部 支部長
- 2013年
- 愛知県歯科医師国保組合 理事長Ⅲ期
愛知県国保連合会 専任審査委員
愛知学院大学歯学部同窓会 相談役
最近の文献
- 斉藤佳雄:若き歯科医へ 21 世紀の歯学
〈その 14〉歯科人生をどう切り開くか。日本歯科評論 No605;P101-116、 1994
- 斉藤佳雄;破折歯根への対応skill up of D e n t a l P r a c t i c e 1 . 歯を守る、P178-183、P192-197 医歯薬出版、東京、2002.
- 斉藤佳雄;深いカリエス-歯髄を守る-; 臨床歯科医のステップアップ研修(1) リスクを持つ歯へのアプローチ 宮地建夫編、P1 ~P18 ヒョーロン・パブリッシャーズ、東京、 2005.