●日時:2019年7月21日(日)9:30~17:00
●講師:天野 敦雄 氏
21世紀の歯科医療には「削る・詰める」に加え、「防ぎ・守る」予防歯科医療の導入が求められています。健口を守るためには、歯周病との対峙が不可欠です。そのためには20世紀の思い込み常識を21世紀の新情報へとアップデートしないといけません。
歯周病菌は18歳以降に口腔内に感染します。その後、歯周局所環境の変化とともに長い年月を掛けてバイオフィルムの病原性は徐々に高まり歯周炎が発症します。この現象をMicrobial shiftと呼びます。歯周病だけでなく、う蝕の原因もバイオフィルムのMicrobial shiftです。歯周病の病因論を正しく理解できれば、無駄のない確度の高い歯周治療ができます。
患者さんによってバイオフィルムの病原性は違います。同じ患者さんでも、バイオフィルムの病原性は一定ではありません。日々、年々、病原性は高まっているのです。そのメカニズムを知り、バイオフィルムの病原性をコントロールできれば、「防ぎ・守る」ペリオマネージメントが可能になります。
歯周炎にどう対峙すべきか、最新の歯周感染論に基づいた歯周治療についてお話させて戴きます。院長先生に限らずたくさんの歯科衛生士さんにもお聞き頂き、明日からの歯周治療に役立てて頂ければ幸いです。
令和1年7月21日(日)第4回愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコースが開催されました。 「なぜ歯周病になるのか?」−21世紀の病因論に基づいた歯周治療と歯周管理−という演題で大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 予防歯科学教授 天野敦夫先生にご講演していただきました。 21世紀になり歯周病の原因は高病原化したバイオフィルムであることが示された。歯周病が発症、進行するのは新たな菌種の感染ではなく、常在菌が栄養、温度、嫌気度、pHなどの環境変化によって細菌達に好ましい生育環境になるMicrobial shiftにより、バイオフィルムの病原性が高まり、歯•歯周組織の間の均衡が崩れるためである。歯周病菌の中でも、レッドコンプレックスと呼ばれる高い病原性をもつ3菌種Porphyromonas gingivalis, Tannerella forsythia, Treponema denticolaは栄養素として鉄分が不可欠であるため、歯周病を止めるには、歯周ポケット内潰瘍面を閉鎖し歯周病菌への血液の供給を断ち、低い病原性をもつバイオフルムに戻すことが重要であるとお話されました。
ポスト平成の歯科医療に期待されるパラダイムシフトは、発症前に口腔疾患発症リスクを客観的•定性的に評価しリスクに応じた予防策を提供することで発症を未然に防ぐ予測歯科の実現である。現在、歯周病のリスク評価指標として使用できるのは細菌検査による細菌学的評価と喫煙などの生活習慣の評価である。最新の病因論を理解し、バイオフィルムと歯•歯周組織のバランスが崩壊しないように長期の管理を行わなければならないと述べられました。 また、歯周病は多くの全身疾患とも関わっているため医科歯科連携の必要性についても触れられました。 明日からの歯周治療に実践できる内容をわかりやすく教えていただき大変有意義な内容でした。