PGC.Journal 愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコース   愛知学院大学歯学部同窓会

 
日時:平成24年9月2(日)9:30〜17:00
講師:宮地 建夫氏

> 講演後記

 
 
1.欠損歯列と欠損補綴
『義歯つまり治療手段が思考と行為の中心をなすことは避けるべきで、咀嚼器官の失われた機能を回復する目的のためには欠損歯列の病態学からとりかかるべきで・・・』これは藍稔訳「欠損歯列の補綴」1980年の"はじめに"の部分だった。このはじめの部分を読んでそれまで混在していた「欠損歯列」と「欠損補綴」をしっかり分けて考えるべきだと思うようになった。
2.欠損歯列という病態の連続性
欠損歯列の主病態を咬合支持の損傷状態あるいは咬合支持の不全とみなし、しかもその欠損歯列は"一つの継続した病態"と捉えるべきではないかと思うようになった。欠損歯列の診断ポイントは一人一人に特有な連続したコースの把握であり、長い経過を把握するためには流れの軌跡を理解しやすい時間軸に沿った指標が必要になる。その病態のコースをレベル・パターン・スピードという視点から理解すると分かりやすい。忘れてならないのは連続した病態が長期になると常に増齢リスクの影響を抱え込むことを覚悟しなければならなくなる。
3.欠損補綴の目標と終末像
義歯装着の目的は機能回復のような(1)患者の現在の問題解決と患者が気づかない(2)将来リスクへの対応という2面がある、このうち将来リスクに対しては歯の喪失拡大・咬合崩壊の抑制を目指すことはもちろんだが、長期経過の多くは欠損拡大の流れを止められない経験をする。そうした患者に対しては欠損歯列の行く着く先の将来像や終末像をイメージすることも大切な診断ポイントになってくる。
 
 
  1. 欠損歯列を見る目
  2. エンドポイント
  3. 咬合欠陥
  4. 欠損パターン
  5. 欠損歯列のコース
  6. 咬合再建
  7. 欠損補綴とリスク
  8. 短縮歯列
  9. natural historyとコース・コントロール
  10. 診断手順と評価
 
 
1971年 東京歯科大学卒、大学院修了(解剖学専攻)
  1972年 東京都千代田区開業
  2000年 日本歯科医師会 学術・生涯研修委員長
  2007年 九州大学歯学部非常勤講師
  2009年 東京歯科大学臨床教授
  2011年 岩手医科大学歯学部非常勤講師
日本補綴歯科学会理事
  2012年 大阪大学歯学部非常勤講師
    現在 東京都新宿区 歯科診療室新宿NS 顧問
 

 
 
  1. 上下顎の喪失歯数バランスについて 歯科學報 第106巻1号p1-4 2006年2月
  2. 古くて新しい臨床の分類  Eichner分類と咬合三角の臨床的意味 ザ・クインテッセンス29-03 P0609-0616 2010年3月
  3. 欠損歯列のリスクはどこまで読めるか?
    Part1 歯界展望115巻5号 p813-836 2010年5月
    Part2歯界展望115巻6号 p999-1019 2010年6月
  4. 歯科臨床医への生涯研修 症例報告を検証する 歯科學報 第111巻3号 p249-253 2011年6月
  5. 症例でみる欠損歯列・欠損補綴 医歯薬出版 2011年6月
 
 
平成24年9月2日、愛知学院大学楠本キャンパス4号館にて、第5回ポストグラデュエートコースが開催されました。講師に宮地建夫先生をお招きして「欠損歯列の診断ポイントと咬合崩壊の抑制 ‐長期症例からみえてきたこと‐ 」と題してご講演賜りました。
午前の講義では、欠損歯列の全体像についてお話頂きました。欠損歯列とは歯列の病態やリスク、さらには補綴目的を探るための“者”であり、“物”である欠損補綴とは分けて考える必要がある。補綴する際には、欠損歯列の病態をまず考えるべきであり、手段である欠損補綴が先行してはいけない。また欠損歯列の主病態を咬合支持の損傷と捉えると、その終末は咬合崩壊であり、難症例の歯列にしないことが大切である。そのためには欠損歯列を連続した一つの病態と捉え、現在のレベルを把握し将来を予測することが欠損歯列の重症化の防止に繋がるとご講演いただきました。
午後の講義では、30年以上に亘る長期症例を多数ご提示頂き、欠損歯列のパターンや流れを分かりやすく解説して頂きました。欠損歯列をどのように評価し、リスクを如何に予見するのか理解を深めるものでした。
最後に『大事なことは患者との縁が切れないこと』。そのためには『患者のわがままを聞きつつも、自分のやりたいことを伝えること』、そして『すべては記録が語ってくれる』と教えて頂きました。今回のご講演は、宮地先生の長年の臨床、研究の集大成であり受講生の心に響くものでありました。

 
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