PGC.Journal 愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコース   愛知学院大学歯学部同窓会

 
日時:平成24年7月8日(日)9:30〜17:00
講師:中村 健太郎氏

> 講演後記

 
 
今日の補綴臨床では、審美回復への関心度が高まるなかで、審美補綴としてポーセレンによる歯冠修復が大きな潮流を占めています。多くの先生は、自然観を誇った「審美」の回復を心がけたいと思っていることでしょう。また、補綴治療は「補綴装置を作製し、装着する」であるとし、その後はその装置がダメにならないように歯科衛生士の方々がプラークコントロールの管理をしていく状況下でリコールを繰り返していく、これが理想の補綴治療像としていませんか。
しかし、装着した補綴装置が壊れていく、ポーセレン部のクラックやチッピング、さらには根尖病巣までさまざまな予期せぬ出来事が起こっていくのは何故でしょうか。また、咬合再構成に踏みこんだものの、自らが与えた「咬合」に自信が持てず、その口腔内の新たな咬合崩壊を心配し続けることになったり、新たな顎機能障害を誘発してしまったりと「咬合」に起因することに悩んでいるのが現状ではないでしょうか。
最近、さまざまな誌面や研修会では、補綴治療における「咬合診断」の診査や診断の重要性が強く説かれるようになりました。そのなかでは、「ワックス診断」に基づいたプロビジョナルレストレーションを作製し、口腔内に装着してレジン添加や形態修正、咬合調整を繰り返していく、いわゆる「プロビをつめる」作業を行い、概ね形態が整ったところでポーセレン材によるファイナルレストレーションの作製へと一連の操作を繰り返すことを教えています。しかし、結局のところはナイトガードやプロテクションスプリントといった補綴装置破損防止装置を必要とすることになってはいませんか。
このようなことでは、補綴治療における「咬合診断」の診査や診断の重要性が揺らいでいるのではないでしょうか。
本来、その口腔内にどのような「咬合」を与えたらよいのかを考えるのではなく、その口腔内にどうして補綴治療が必要になったかを考え、どのように最適な補綴装置を装着することができるかを考えることから始まるのです。その患者さんの口腔内、顎口腔系に見合った「補綴装置」や「咬合」を見出すことを目的とした「補綴診断」が必要とされるのです。
そこで、本研修会では「適切な診断」を下すべく、「補綴診断」を再考してみたいと思います。また、「補綴診断」は、補綴装置を作製するうえで、歯科技工士の先生にもご理解いただかないとなりません。歯科技工士の先生もふるってご参加ください。
 
 
  1. 総義歯臨床の問題点とは?
  2. 総義歯の補綴診断とは?
  3. 総義歯において押さえておくべき印象採得、咬合採得とは?
  4. 総義歯における人工歯配列、ろう義歯試適の重要性とは?
  5. 総義歯によるオーラルリハビリテーションとは?
 
 
1962年 愛知県に生まれる
  1989年 愛知学院大学歯学部卒業
愛知学院大学歯学部歯科補綴学第3講座(冠・橋義歯学)
  1995年 中村歯科醫院 7月21日開院
  2010年 中村歯科醫院 7月20日終院
修練会 設立
補綴臨床総合研究所設立
 
【所属】
日本補綴歯科学会 専門医、KaVo Dental Systems Japan Co.,Ltd. Official Adviser、 株式会社ジーシー プロダクト アドバイザー、株式会社松風 プロダクト アドバイザー

 
 
  1. 連載 歯科材料に強くなるレベルアップ講座,クインテッセンス,2011.
  2. 特別企画 総義歯臨床からの逆襲!超高齢社会のいま,総義歯臨床を再考する,クインテッセンス,2010-2011.(連載中)
  3. シリーズ企画 患者本位の補綴臨床を再考する,医歯薬出版,2010-2011.(連載中)
  4. 連載 若手Drのための“明日の臨床に役立つ咬合講座” human based occlusion 患者本位の咬合を求めて,クインテッセンス,2008.
  5. 連載 「力」を読む歯科臨床,医歯薬出版,2007.
 
 
7月8日(日)に愛知学院大学楠本学舎の第一教室にて第3回ポストグラデュエートコースが開催されました。講師は中村健太郎先生をお迎えし「補綴診断を再考する − 的確な診断とは? − 」と題して9時半から17時までみっちりご講演をしていただきました。
参加者は研修医の先生方からベテランとお見受けできる先生まで幅広く、第一教室がほぼ満席となり、先生方が臨床において補綴診断に頭を悩ませている様子がうかがえました。
午前中の講義では、「補綴診断とは?」という非常に大きな観点から始まり、診断や診査、処置と治療など日常でよく耳にする基本的用語を再認識させられることとなりました。私も含めて多くの先生方が学生当時に大学で覚えた内容とは少しずつ変化してきていることを実感したことだと思います。また機能的不正咬合と機能的正常咬合を見定めるには「咬頭嵌合位」の判断が非常に大切でそのために日本ではCR(中心位)=CO(中心咬合位)と謳われ「咬合診断」「補綴診断」において重要な診査ポイントを占めてきたとされている。では、「中心位」の現代の見解については『「中心位」や「中心位への下顎の誘導」には決定的な科学的根拠がみとめられないことから、「中心位」を決定する科学的根拠に基づいた臨床術式は存在しないのである。』とのことでしたが、エビデンスに基づいており納得させられました。ここまでだけでは明日から何を基準に補綴診断をおこなえば良いのかと不安に包まれながらの昼食でした。
午後からの講義ではそれまでの悩みを吹っ飛ばすように一つ一つ解決していただきました。形態的・解剖的な咬頭嵌合位や習慣性閉口終末位の収束・未収束、咀嚼終末位の収束・未収束などの診断方法をとても具体的に説明され、午前最後のどんよりとした受講生の顔色が、晴れ晴れしてくるのが伝わってくるほどでした。また、咬頭嵌合位を診断するための科学的根拠に基づいた基礎知識として、機能咬頭と非機能咬頭をナイフとフォークに例えたり、スピルウェイ(舌面溝)の必要性など非常にわかりやすく解説していただきました。
最後に日々の診療では、科学的根拠に基づいた「咬頭嵌合位」を追い求め、的確な診断により病状とその原因や程度の把握、治療方法を決定した後に初めて診療を行うように心がけて頂きたいということで中村先生の刺激的な講演を終えました。

 
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