今日の補綴臨床では、審美回復への関心度が高まるなかで、審美補綴としてポーセレンによる歯冠修復が大きな潮流を占めています。多くの先生は、自然観を誇った「審美」の回復を心がけたいと思っていることでしょう。また、補綴治療は「補綴装置を作製し、装着する」であるとし、その後はその装置がダメにならないように歯科衛生士の方々がプラークコントロールの管理をしていく状況下でリコールを繰り返していく、これが理想の補綴治療像としていませんか。
しかし、装着した補綴装置が壊れていく、ポーセレン部のクラックやチッピング、さらには根尖病巣までさまざまな予期せぬ出来事が起こっていくのは何故でしょうか。また、咬合再構成に踏みこんだものの、自らが与えた「咬合」に自信が持てず、その口腔内の新たな咬合崩壊を心配し続けることになったり、新たな顎機能障害を誘発してしまったりと「咬合」に起因することに悩んでいるのが現状ではないでしょうか。
最近、さまざまな誌面や研修会では、補綴治療における「咬合診断」の診査や診断の重要性が強く説かれるようになりました。そのなかでは、「ワックス診断」に基づいたプロビジョナルレストレーションを作製し、口腔内に装着してレジン添加や形態修正、咬合調整を繰り返していく、いわゆる「プロビをつめる」作業を行い、概ね形態が整ったところでポーセレン材によるファイナルレストレーションの作製へと一連の操作を繰り返すことを教えています。しかし、結局のところはナイトガードやプロテクションスプリントといった補綴装置破損防止装置を必要とすることになってはいませんか。
このようなことでは、補綴治療における「咬合診断」の診査や診断の重要性が揺らいでいるのではないでしょうか。
本来、その口腔内にどのような「咬合」を与えたらよいのかを考えるのではなく、その口腔内にどうして補綴治療が必要になったかを考え、どのように最適な補綴装置を装着することができるかを考えることから始まるのです。その患者さんの口腔内、顎口腔系に見合った「補綴装置」や「咬合」を見出すことを目的とした「補綴診断」が必要とされるのです。
そこで、本研修会では「適切な診断」を下すべく、「補綴診断」を再考してみたいと思います。また、「補綴診断」は、補綴装置を作製するうえで、歯科技工士の先生にもご理解いただかないとなりません。歯科技工士の先生もふるってご参加ください。