PGC.Journal 愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコース   愛知学院大学歯学部同窓会

 
日時:平成24年6月3日(日) 9:30〜17:00【午後】
講師:天野 敦雄氏

> 講演後記

 
 
Porphyromonas gingivalis、Treponema denticola、Tannerella forsythiaの歯周病菌悪玉3兄弟にRed complexの称号が与えられた。Red complexは強力な歯周毒性をもっているが、弱点は多い。血液中の鉄分(ヘモグロビン)と栄養素が増殖に必須、酸素や酸性環境も苦手なため、出血のない浅いポケットではごく僅かの菌数しか生存できない。しかし、プラーク蓄積、組織抵抗性低下などをきっかけに歯肉溝内面に潰瘍が形成され、毛細血管がバイオフィルムに暴露された時、供給される血液を得て、Red complexは数千倍に増殖する。これが歯周病発症の瞬間だ。歯周ポケット内に血液が供給され続ける限り、歯周病は持続する。どうやって歯周病に対峙すべきか。最新の歯周感染論に基づいた歯周治療についてお話しさせて戴く。
 
 
  1. 歯周病の原因
  2. 歯周病発症の瞬間
  3. 歯周破壊へのロードマップ
  4. 歯周治療の目標
  5. 歯周病細菌検査
  6. 歯周病菌の細胞寄生
  7. 歯周病は完治しない
  8. 歯周病と全身疾患の分子基盤
  9. 口臭が放つ細胞毒性
 
 
1958年 高知市生まれ
  1984年 大阪大学歯学部 卒業
  1987年 大阪大学歯学部 予防歯科学講座 助手
  1992年 ニューヨーク州立大学・歯 博士研究員
  1997年 大阪大学歯学部 障害者歯科治療部 講師
  2000年 大阪大学歯学部 口腔分子免疫制御学講座 教授
  2011年 大阪大学歯学部 予防歯科学教室 教授
    現在、口腔科学フロンティアセンター長、副研究科長(副学部長)を兼任
 

 
 
  1. Amano A* (2010): Bacterial adhesins in periodontitis. Periodontology 2000, 52: 12-37.
  2. Amano A*, Furuta N, Tsuda K (2010): Host membrane trafficking for conveyance of intracellular oral pathogens. Periodontology 2000, 52: 84-93.
  3. Amano A* Takeuchi H, Furuta N (2010): Outer membrane vesicles function as offensive weapons in host-parasite interactions. Microbes and Infection, 12(11):791-798.
  4. 天野敦雄、稲葉裕明 (2012): 循環器疾患と歯周病  CLINICAL CALCIUM, 19(1)
  5. 天野敦雄、村上伸也、岡賢二(編)(2012) :歯周病を科学する クインテッセンス社
 
 

平成24年6月3日(日)愛知学院歯学部楠元学舎にて、「細菌学的にペリオを診る」と題して講師に鶴見大学歯学部 探索歯学講座 教授 花田信弘先生・大阪大学大学院歯学研究科 予防歯科学教室 教授 天野敦雄先生をお招きして、第1回ポストグラデュエートコースが開催されました。
午前には、花田先生のご講演により歯周病とは慢性的な共生バランス失調(Dysbiosis)による口腔内で腐敗現象に陥っている状態であり、治療には、共生バランス失調の状態から細菌との共生である(Symbiosis)の状態に戻すことが重要であること。歯周病菌を口腔内から排除し、常在細菌と生体の調和(Symbiosis)を保つことが健康長寿への1つの確実な道へとなること。歯科医療の専門科は、唾液の定期検査によって常在細菌叢と自然免疫のバランスを監視し、腐敗細菌による共生バランス失調の状態を早期に発見し、歯面クリーニングとPrebiotics・Probiotics・Antibioticsの技術を駆使し細菌叢を早期に健全化する事が重要であることなどをご講演いただきました。
午後の天野先生のご講演では、歯周病細菌の中でも悪玉3菌種(Red complex)P.gingivalis T.denticola T.forsythia  は歯周病抑制の研究ターゲットになっていること。歯周病患者の9割以上からP. gingivalisの線毛型U型は検出されることより、細菌検査によって、歯周病の発病に関する因子で線毛型を事前に知っておくことは、治療をすすめるうえで重要になること。また、歯周ポケットに形成された潰瘍面から抹消血管に侵入し全身を駆け巡る歯周病細菌こそが、低体重出産・ 心冠状動脈疾患・糖尿病・脳血管疾患などを憎悪させる原因であり、歯周病細菌と歯周組織の拮抗が崩壊しないように歯科医療従事者は注意深く見守る必要があるとご講演いただきました。細菌学の視点から、歯周病を予防し、コントロールするためのさまざまなアプローチをお二人の先生からわかりやすくご講演いただき日々の臨床に役立つ情報を多数いただきました。
講演後は活発な質疑応答に丁寧にお答えいただき大変有意義な時間となりました。


 
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