PGC.Journal 愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコース   愛知学院大学歯学部同窓会

 
日時:平成23年11月13(日)9:30〜17:00
講師:小出 馨氏

> 講演後記

 
  顎関節症の治療を行う上での問題点は、臨床症状の改善と病態とが必ずしも相関しないことであり、臨床症状が改善したとしても病態は改善しておらず、むしろ悪化している場合もある。したがって、治療にあたっては臨床症状のみにとらわれることなく、まず的確に病態を捉える必要があり、そのためには顎口腔系を構成する顎関節・筋・咬合に対する顎機能診査が不可欠である。
しかし、ほとんどの医療機関でこの極めて大切な顎機能診査が的確には行われていないのが現状である。その理由は、従来一般に提唱されてきた顎機能診査法の有効性が必ずしも高くはなく、しかも日常臨床に十分組み込めるものとは言い難いからである。
そこで、まず私達が日常臨床で行っている"顎関節と筋の触診法"のポイントを具体的に示す。これは、顎口腔系の基本となる機能解剖や生理をふまえ、10〜20秒程度の短時間で行える実践的で有効性の高い触診法である。また、咬合に関しては、従来その多くの要素があいまいで明確な指標が示されていなかったため、実際の治療は勘と経験に頼らざるを得なかった。咬合を分析すると7つの要素からなり、咬合診断や顎機能に調和した咬合構成を行うには、この"咬合の7要素"ごとに構成することにより、安全で予知性の高い治療へ近づけることができる。
今回は、顎関節症を診断するうえで基本となる"顎関節と筋の触診法"と咬合診断や顎機能と調和した咬合構成の基準となる"咬合の7要素"について具体的に示す予定である。 明日から臨床の現場で生かしていただければ幸いである。
 
 
  1. 顎関節症とは
  2. 顎関節症の臨床症状と病態
  3. 顎機能の診査項目
  4. 筋の診査
  5. 顎関節の診査
  6. 咬合の診査
  7. 咬合の7要素とは
  8. 中心咬合位の要素
  9. 偏心位の要素
  10. 咬合平面の要素
 
 
1979年 日本歯科大学新潟歯学部卒業
  1983年 日本歯科大学大学院修了(歯学博士)
  1984年 日本歯科大学新潟歯学部歯科補綴学教室第1講座講師
  1988年 トロント大学歯学部補綴学教室客員教授(2006年まで)
  1989年 日本歯科大学新潟歯学部歯科補綴学教室第1講座助教授
  1998年 日本歯科大学新潟歯学部歯科補綴学教室第1講座主任教授
日本歯科大学大学院新潟歯学研究科機能性咬合治療学教授
     
 
【所属】
日本歯科大学新潟生命歯学部歯科補綴学第1講座主任教授
日本歯科大学大学院新潟生命歯学研究科機能性咬合治療学主任教授

 
 
  1. 図解咬合採得−第2版−(補綴臨床別冊2006)
  2. 基本クラスプデンチャーの設計−第4版−(補綴臨床別冊2008)
  3. デザイニング・コンプリートデンチャー(歯科技工別冊2008)
  4. クリニカルクラスプデンチャー−第3版−(歯科技工別冊2009)
  5. 臨床機能咬合学−咬合の7要素によるオクルージョンの臨床−(補綴臨床別冊2009)
  6. チェアサイドで行う顎機能診査のための基本機能解剖−第3版−(補綴臨床別冊2010)
  7. DAWSON・FUNCTIONAL OCCLUSION 監訳(医歯薬出版2010)
 
 

平成23年11月13日、愛知学院大学歯学部末盛附属病院にて、第7回ポストグラデュエートコースが開催されました。講師に小出 馨先生をお招きして、「顎関節症入門 —咬合からみた顎関節—」という演題で講演を賜りました。
午前は、顎関節症を顎関節とそれに関係する筋肉の観点から講演をして頂きました。咬合の不調和が顎関節や筋などの顎機能系を障害し、そしてオトガイの側方偏位、下顎角部の張りの左右差、人中の歪みだけでなく、姿勢の歪みなど全身に悪影響を及ぼすとのことでした。また、顎関節症については現状を把握するための病態診断、再発防止のための発症メカニズムの診断の重要性について、症例を動画で示しながら述べられました。さらに治療法の1つであるスタビリゼーションスプリントの作製、調整方法についても講演して頂きました。
午後は顎関節症を咬合の観点から講演して頂きました。咬合の7要素として、中心咬合位の位置、中心咬合位の接触関係、中心咬合位の安定性、偏心位でのガイドの部位、偏心位でのガイドの方向、咬合平面の位置、咬合平面の彎曲度を挙げ、この咬合の7要素ごとに咬合診断と咬合構成の基準を臨床に即して具体的に解説していただきました。

 講演会の参加者は若い同窓生を中心に70名を越え、講演後は参加者からの質問も相次ぎました。本講演は、顎口腔系を構成する3つの要素である、顎関節、筋、咬合を理解し、それらを臨床に生かすための一助になったと思います。

 
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