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近年、重要視されている全人的医療とは、「疾患の持つ生物学的な側面だけに着目するのではなく、社会・心理面あるいは経済面など多面的な視点で患者をとらえ、患者中心の医療を展開すること」と定義されている。患者の心理面ということを考える際、まず念頭に置くべきことは、予想以上に精神疾患を併発している患者は多いという事実である。例えば、全人口の50%は、一生のうち一度でも何らかの精神障害を経験するとの報告がなされている。また、本邦では10 年以上にわたり年間の自殺者が3 万人を越えるという状況が続いており、 平成19 年度に政府が発表した自殺対策大綱では「 かかりつけ医がゲートキーパーとしてうつ病等の精神疾患の早期発見に役割を果たすこと」が強調されている。この様な背景を踏まえて、卒後医師研修の必須化に伴い、精神科研修が義務づけられ、あらゆる医師は精神疾患への診断と初期対応を身につけることが求められている。精神科研修において、もう一つ重要なポイントは、不安が高く、落ち着かない患者から、彼らのニーズを引き出して治療合意に結びつける医療面接技術を習得することである。
歯科医師の方々にも、医師と同様に、一般的な精神疾患の診断や初期対応、そして医療面接のポイントを知って頂くことは、前述した様に重要と考え、本企画を企図した。 |
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- 精神疾患の発症頻度と社会的損失
- 自殺
- 身体疾患と精神疾患の関係
- 精神医学の診断体系
- 精神医学の科学性
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- うつ病の治療:患者・家族との治療合意
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<尾崎 紀夫> |
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1982年 |
名古屋大学医学部卒業
社会保険中京病院研修医 |
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1984年 |
名古屋大学病院精神科医員 |
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1987年 |
中部労災病院精神科医師 |
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1990年 |
米国・国立精神保健研究所(NIMH)visiting fellow |
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1995年 |
藤田保健衛生大学医学部精神医学教室講師 |
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1998年 |
同上教授を経て |
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2003年 |
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野・親と子どもの心療学分野教授に就任
現在に至る。 |
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【所属】
World Federat ion of Biological Psychiat ry(Executive Member)、Pacifi c Rim Association for Clinical Pharmacogenetics(Executive Board Member)、日本精神神経学会(理事)日本生物学的精神医学会(理事)、日本神経精神薬理学会(理事)、日本臨床精神神経薬理学会(理事)、日本精神・行動遺伝医学会(理事)、日本統合失調症学会(理事)、日本産業精神保健学会(理事)、日本うつ病学会(理事)など |
<木村 宏之> |
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1994年 |
東京慈恵会医科大学医学部卒業。
名古屋第二赤十字病院研修医 |
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1996年 |
名古屋大学病院精神科医員 |
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1998年 |
あいせい紀年病院精神科医師 |
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2001年 |
名古屋第二赤十字病院精神科医師 |
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2004年 |
名古屋大学医学部附属病院精神科助教 |
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2008年 |
名古屋大学医学部附属病院精神科講師
現在に至る |
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【所属】
日本精神神経学会、日本総合病院精神医学会、日本精神分析学会、日本歯科心身医学会、日本思春期青年期精神医学会、日本児童青年精神医学会、精神分析的精神医学会、など |
<伊藤 幹子氏> |
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1984年 |
愛知学院大学歯学部歯学科卒業
愛知学院大学歯学部口腔外科学第一講座(現・顎口腔外科学講座)入局 |
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1985年 |
愛知学院大学歯学部附属病院にて口腔心身症外来を開始
(故・深谷昌彦教授と心療歯科研究グループ発足) |
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1987年 |
資生会八事病院勤務(1991年まで) |
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1993年 |
愛知学院大学歯学部歯学博士学位取得 |
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1994年 |
愛知学院大学歯学部口腔外科学第一講座非常勤講師 |
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1999年 |
愛知学院大学歯学部附属病院にてリエゾン歯科医療グループ発足
(栗田賢一教授が名古屋大学医学部精神医学講座より精神科医師を招聘)
同精神科医師(近藤三男氏)よりスーパービジョンを受け始める |
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2004年 |
医療法人はざま医院理事 |
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2007年 |
中京大学心理学部心理学科非常勤講師
現在に至る |
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【所属】
日本歯科心身医学会(指導医・認定医、評議員)、日本心身医学会(代議員)、日本口腔外科学会、日本口腔科学会、日本精神神経学会、日本精神分析学会 など |
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<尾崎 紀夫氏>
- 気分障害,医学書院 編者:上島国利,野村総一郎,大野 裕,樋口輝彦,尾崎紀夫,神庭重信(2008)
- 標準精神医学,医学書院 編者:樋口輝彦,野村総一郎,尾崎紀夫(2009)
- 精神薬理学大辞典,西村書店 総監訳:兼子直,尾崎紀夫(2009)
- 精神疾患の薬物療法ガイド,星和書店 編者:稲田俊也,稲垣 中,尾崎紀夫,伊豫雅臣(2008)
- うつ病リワークプログラムのはじめ方,弘文堂 尾崎紀夫他著(2009)
<木村宏之氏>
- 精神科必修ハンドブック リエゾン精神医学 羊土社 2005(共著)
- 精神的ケア Q & A ナーシングケア 総合医学者 2006(共著)
- 境界性パーソナリティ障害の精神療法成田善弘編 金剛出版 2006(共著)
- 境界性パーソナリティ障害 − 日本版ガイドライン牛島定信編 金剛出版 2008(共著)
<伊藤 幹子氏>
- Mikiko Ito et al:Pain Threshold and Pain Recovery after Experimental Stimulation in Patients with Burning Mouth Syndrom. Psychiatry and Clinical Neurosciences . 56:161-168. 2002.
- 伊藤幹子,他:当科で経験したパーソナリティ障害患者の臨床的検討 ―境界性および自己愛性パーソナリティ障害の治療対策―.日歯心身.21(1):13-22. 2006.
- 伊藤幹子,他:歯学部付属病院におけるリエゾン精神医療の報告 ―口腔心身症診療ガイドラインを設けて―.精神科.8(5):430-438, 2006.
- ( 分担執筆)歯科臨床研究マニュアル・アドバンス編・ひとつ上をめざす研修医のために 第3 章.3.舌痛症 永末書店 2007.など
- Mikiko Ito et al:Successful Treatment of Trigeminal Neuralgia with Milnacipran. Clinical Neuropharmacology 30:183-185. 2007.
- M i k i k o I t o e t a l : E f f e c t i v e n e s s o f Milnacipran for the Treatment of Chronic Pain in the Orofacial Region. Clinical Neuropharmacology 2009.( in press)
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第2回「歯科診療に必要な精神医学-患者家族のニーズを踏まえた包括的歯科診療の実戦に向けて」は、医師と私たち歯科医師の両面から捉えた精神医学に関する講演でした。演者は、医師の立場より尾崎紀夫先生、木村宏之先生、歯科医師として伊藤幹子先生に講演していただきました。
尾崎先生より精神疾患に関する誤解と偏見、治療への導入について講演していただきました。私たち歯科と医科のスムーズな連携やお互いの理解がいかに重要であるかを再認識した講演でした。続いて木村先生より「歯科領域における医療面接」を主題に講演していただきました。この講演では、面接の基本技術をもとに解決の糸口を示していただきました。
最後に歯科医師の立場より伊藤先生に講演していただきました。この講演では、グループ討論を織り交ぜたユニークな内容となりました。この討論から、具体的にイメージし、どのような対応をすれば良いのかを探り、深く考えさせられる講演となりました。
私たちP.G.Cは、今回の精神医学講演によって「心も体も診る」歯科医師になることを目標に企画しました。3名の諸先生による講演から、明日の診療に応用できる知識と経験を得る事が出来たのではないでしょうか。 P.G.C.ではこのような魅力あるコースを企画するよう努めています。皆様のご参加、リクエストをお待ち致しております。
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