PGC.journal

第2回講演

舌骨位置異常と戦う武器はこれだ
-小児から老人まで呼吸と歩行を支える装置の製作法と効果-

●日時:2021年11月21日(日)9:30~17:00
●講師:丸茂 義二

講師からのメッセージ

本講演はWebでの講演はございません

オーラルフレイルとは、年齢に関係なく口腔内で観察される口腔機能の低下状態を示す概念である。昨年はこのオーラルフレイルの概念を説明した。

最善の義歯を製作するとはどういうことであろう。それは口腔機能を十分に満たすことが出来る義歯である。今は高齢者のみならず若年者もフレイルと言われるようになった。その共通項は舌の機能障害である。その舌の機能障害の原因は舌骨位置の低下である。若年者から高齢者まで共通する舌骨問題はそれぞれの年代で特徴がある。若年者の舌骨低位問題は発育不良と低運動性などの生活習慣が関わっている。それに比べ高齢者においては高齢化に伴う呼吸機能の低下と運動性の低下である。そして両者に共通する咀嚼障害である。若年者における咀嚼障害と高齢者における咀嚼障害は内容が若干違う。それらの口腔内を中心とする問題点を解決する方法は舌骨の位置を変えて舌に目覚めて貰わなくてはならない。今回舌に対して機能回復をもたらす装置として各種の装置を開発した。勿論補綴物にその形態を組み込むことも必要である。装置の必要性や構造と製作法を理解せずに応用することは出来ない。今回はその装置の原理や応用について解説し、フレイルを乗り越える手段の一つとして考えてみようと思っている。

講演内容

  1. 舌骨位置異常とは
  2. 舌機能は満足な舌骨位置の上に実現される
  3. 舌の運動空間とは
  4. 舌の位置を決めるものは舌骨
  5. 舌骨の位置を変えるもの
  6. 直筋系の活性の結果
  7. 装置の種類と製作法
  8. 総義歯への応用とは

略歴

1980年
日本歯科大学卒業、日本歯科大学大学院歯学研究科補綴学専攻
1984年
歯学博士取得、日本歯科大学補綴学第二講座助手
1988年
日本歯科大学補綴学教室講師
2001年
日本歯科大学付属病院顎関節症診療センター初代センター長
2004年
日本歯科大学付属病院助教授
2005年
日本歯科大学東京短期大学教授
2010年
日本歯科大学名誉教授
 

最近の文献

  1. 月刊小児歯科臨床4月号『歯突起を巡る諸問題』

講演後記

令和3年11月21日(日)に愛知学院大学楠元学舎薬学部棟にて第2回ポストグラデュエートコースが開催されました。講師に丸茂義二先生をお招きして「舌骨位置異常と戦う武器はこれだ」− 小児から老人まで呼吸と歩行を支える装置の製作法と効果 – と題し講演して頂きました。コロナ禍の影響で約2年ぶりの対面でのポストグラデュエートコースということもあり、感染対策は大学の方針に準じ、さらに窓は常時開放し受講生にも頻繁にアルコール消毒お願いするなど徹底して行われました。受講生もスタッフも久しぶりの対面での講演だけに気合の入った講演となりました。

今回の注目すべき点は舌骨の位置ということで、舌骨は骨同士の関節的接触は無いが筋肉や靭帯で他の骨と繋がっていてホームポジションがあり、成長発育と老化の中で呼吸も咀嚼も順調に行われるためには、舌骨の正常な位置関係の維持が非常に重要になってくるとのことでした。

舌骨は手をしっかり降って歩くことで胸と股関節のねじれが生じ、下顎骨の中で左右に、飲み込む際には上下に動き下顎骨の発育に影響している。
舌骨の上には舌が乗っていて、頭蓋と舌と舌骨と頸椎と身体(肩と胸郭と腹腔と骨盤を股関節と脚)の正中線が一致して初めてちゃんと機能できるようになっており、正しい姿勢で歩くことや食事の際にちゃんと座りお箸とお茶碗を持ってよそ見をせずに行儀よく食べることの重要性を、顔面神経の発達と関連付けながら解説して頂きました。

また、舌骨と呼吸器系の関係にも触れ、胸郭が低下して口蓋と舌骨の距離が離れた状態で正常な呼吸や嚥下機能が得られないため、乖離してしまった状態を埋める口蓋装置(SPP)から総義歯への応用まで御教授頂きました。 明日から直ぐに患者さんへ活かせるかは受講生次第ですが、我々の臨床において別の角度から診ることができるようになるのは間違いない非常に有意義な講演でした。

ポストグラデュエートコースでは今後も感染対策に十分配慮しつつも、魅力的で熱い内容のコースを用意し皆様のご参加をお待ちしております。