第1回講演
治る歯髄、治らない歯髄
-歯髄保存に失敗する本当の理由-
●日時:2021年10月24日(日)9:30~13:00
●講師:泉 英之 氏
講師からのメッセージ
多くの歯科医師は「できれば歯髄を保存したい」という思いで日常臨床を行っているのではないでしょうか。若い歯科医師であれば直感的なものかもしれないし、経験を積んだ歯科医師であれば、日々の臨床を通じ、有髄歯の予後の良さ、無髄歯のトラブルの多さを経験しているかもしれません。私の臨床では、多くの方が長期にわたりメインテナンスに通われており、メインテナンス中にう蝕と歯周病で歯を失うことはほとんどありませんが、失活歯の歯根破折には日々苦慮しています。歯髄保存の大切さを痛感しています。
その一方、「MTAで直接覆髄を行ってみたが上手くいかなかった」、「良かれと思って歯髄を保存したけれども強い痛みが生じて抜髄になり、その過程で患者との信頼関係を失ってしまった」、「不確実な治療をしたくない」などの経験から、歯髄保存にあまり積極的になれないこともあるようです。このような迷いがある理由は、経験的に成功率が低いことや失敗の原因がはっきりしていないことが考えられます。
歯髄保存に失敗する理由には、①治療前の診断が間違っていた(治らない歯髄を残そうとした)、②治療技術の問題で失敗した(治るはずの歯髄が死んでしまった)があります。今回は「治る歯髄、治らない歯髄」の生物学的原則を解説したうえで、臨床的にこれらをどう見分けるか、歯髄の診断と治療方針について話をさせていただきます。皆様の臨床のお役に立てることを願っています。
講演内容
- 歯髄保存に失敗する理由
- 歯髄の診断
- 直接覆髄
略歴
- 2000年
- 日本大学松戸歯学部卒業
日本大学松戸歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座
- 2004年
- 西本歯科医院
泉歯科医院 開院
現在に至る
所属学会
・日本自家歯牙移植・外傷歯学研究会
・国際外傷歯学会(International Association of Dental Traumatology)
・米国歯内療法学会(American Association of Endodontists)
・日本歯内療法学会
最近の文献
- 治る歯髄 治らない歯髄 歯髄保存の科学と臨床. クインテッセンス出版、2018年
- リクッチのエンドドントロジー. クインテッセンス出版、2017年(監訳)
- MTA時代のVital Pulp Therapy歯頸部断髄の科学と臨床.the Quintessence. Vol.39 No.1/2020
- 歯髄が残れば歯も残る ─露髄した歯髄の何を見るのか?. 別冊 ザ・クインテッセンス YEARBOOK 2018 気鋭歯科医師が歯を残す・守る そのエビデンスとテクニック,患者説明.
- 深在性う蝕治療における歯髄の診断. the Quintessence 2017; 7・8月号.
講演後記
令和3年10月24日年第1回PGC講習会が行われました。昨年はコロナ禍にて全ての講習会が中止となり1年ぶりの開催となりました。
今回は滋賀県長浜市にてご開業の泉英之先生をお招きし、「治る歯髄治らない歯髄」演題でご講演頂きました。
非常事態宣言が開けたばかりで、三密を避ける必要があり、講師の泉先生のご指導もあり今回はWEBでの開催となりました。
事前に講演会資料も配信されましたが、この内容を午前中にて消化できるかと心配になる程の資料を作成頂きました。
また、日々臨床に携わっている泉先生は非常に多くの臨床例を動画にてご提示いただき、我々臨床家が聞きたい事を使用材料から臨床における勘どころまでご丁寧に説明いただき、更にその臨床上の成果が学術的にも裏付けされている事を多くの論文にてご提示いただき大変わかりやすくご説明いただきました。
受講生からの多数の質問にも最後までお答えいただき、画面を通してですが泉先生の息づかいが感じられる講習会でした。明日からの臨床に役立つ有意義な半日公演でした。