PGC.journal

第1回講演

スウェーデンの歯周病学に基づく臨床
-歯周病・インプラントからインプラント周囲炎まで-

●日時:平成29年7月2日(日)9:30~17:00
●講師:大月 基弘

講師からのメッセージ

近年インプラント治療が身近なものとなり、患者さんは多くの恩恵を受けている反面、プランニングやメインテナンスが疎かになっており、問題を抱えているケースを多く見かけるようになりました。私が卒業した1999 年時点では口腔内にインプラントが入っている患者さんのパノラマを見ることは稀でしたが、時代の波に乗りインプラントブームと呼ばれる時期を経て、現在は約2%の患者さんの口腔内にインプラントが存在している状況です。ただしインプラントに対する不信感がマスコミの報道などで募っていることは間違いなく、インプラントの信頼を回復させるためには患者さんと正しい情報を共有し、歯周病学をベースとした知識を医療サイドは持ち合わせている必要があると考えます。

本日は私がスウェーデンで学んできたことをベースにした歯周/インプラント治療についての話をさせて頂き、歯牙、インプラントともに長期的な視野に立ち健康に機能させるための考えをシェアさせていただこうと思います。

講演内容

  1. スウェーデンで学んだ歯周病学
  2. 歯周治療を基礎においたインプラント治療
  3. インプラント周囲病変を正しく理解する

略歴

1999年
広島大学卒業
大阪大学歯学部付属病院勤務
2002年
赤野歯科医院勤務 分院長歴任
2012年
イエテボリ大学大学院専門医課程卒業
ヨーロッパ歯周病専門医・インプラント専門医
2013年
DUO specialists dental clinic 院長
日本臨床歯周病学会認定医
2014年
大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野 所属

所属学会

日本臨床歯周病学会/日本歯周病学会/日本口腔インプラント学会/ITIメンバー

最近の文献

  1. 2015 ザ・クインテッセンス11 月号特集
    the Quintessence.Vol.34 No.11/2015:2370-2381
    “スウェーデンと日本の視点から、今あるべき歯科医療を考える”
    大月基弘、Craes Bernhardsson、大門弘治、松田博文
  2. 2016 クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー
    vol.23, No.1, p0011-0027,2016
    特別座談会 “スウェーデンの現状に学ぶ日本のインプラント治療の未来像”
    前田芳信、大月基弘、和田誠大
  3. 歯科衛生士7 月、8 月 Clinical 特集
    歯科衛生士 July 2016 vol.40, p40-52
    歯科衛生士 August 2016 vol.40, p56-69
    “DH が守れる最後のチャンス インプラント周囲粘膜炎”
    大月基弘、鈴木秀典
  4. ザ・クインテッセンス6 月、12 月号特集
    the Quintessence. Vol35 No.6 / 2016: 1282-1307
    the Quintessence. Vol35 No.12 / 2016: 2788-2813
    “第一大臼歯を保存せよ”
    中村健太郎、牛窪敏博、大月基弘

講演後記

平成29年7月2日(日)に愛知学院大学附属病院にて、第1回ポストグラディエートコースが開催されました。
講師にスウェーデンのイエテボリ大学大学院専門医課程を卒業され、ヨーロッパ歯周病専門医・インプラント専門医である、大月先生をお招きして「スウェーデンの歯周病学に基づく臨床 ~歯周病・インプラントからインプラント周囲炎まで~」と題してご講演賜りました。 スウェーデンの治療の多くは科学的根拠をもってサポートされており、さらにナショナルガイドラインが存在します。午前中はスウェーデンにおける歯周病・インプラント治療の考え方についてお話し頂きました。まずインフェクションコントロールについて、その後歯周基本治療の重要性と外科的歯周治療の適応症の見分け方についてお話し頂きました。インプラントを行う際、大掛かりな骨増生や上顎洞挙上術などを避け、インプラントの傾斜埋入・ショートインプラントの使用・カンチレバーの付与によりシンプルにし、治療計画の段階で複雑な治療を避ける必要性や、また歯周病患者はインプラント周囲炎に罹患する可能性が高いのでより厳密なメインテナンスが必須となることを教えて頂きました。

午後からはインプラント周囲病変の基本知識・治療・メインテナンスについてお話し頂きました。5年以上経過にて、インプラント粘膜炎約60%、インプラント周囲炎20%の患者に認められるというシステマティックレビューを見せて頂き身近な疾病だと認識させられました。プラーク除去をみる研究(ガーゼ、超音波、エアーアブレーション、ステンレスブラシ、Er:YAGレーザーで比較)においては生食ガーゼの清掃が最も除去率が高いのに驚きを隠せませんでした。
今回この講演を通して、歯周病のインフェクションコントロールの重要性やインプラント周囲病変等を科学的根拠の基、深く理解できました。貴重な講演を頂いた大月先生に深く御礼申し上げます。