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第3回講演

歯周治療 そうすればよかったんだ
-様々な骨欠損形態に応じた軟・硬組織マネージメントの実際-

●日時:平成28年8月28日(日)9:30~17:00
●講師:三谷 章雄 氏、北島 一

講師からのメッセージ

三谷 章雄
歯周病は成人の8 割が罹患しており、 糖尿病・心臓血管疾患をはじめ、アルツハイマー病やがんなど、様々な全身疾患との関連が話題となっています。こういった情報は患者も良く勉強しており、本気で歯周病を改善したいと思っている患者が非常に増えたと感じます。また、超高齢社会となり、高齢者の歯周治療にも関心が高まっています。高齢者への治療という目前の問題を解決するだけではなく、将来的によりシンプルな高齢者治療を実現させるために、患者が20 〜30 歳の時から歯科にて対応する体制を整えなければならないのではないでしょうか?そういう点からも、本気で挑む歯周治療や歯周病予防の必要性がより一層高まっております。そして既に進行してしまった歯周病を改善するために歯周外科手術をマスターする事は避けては通れない道となってきます。
そこで本講演では、歯周外科治療を成功へと導く為に、まず原因除去療法である歯周基本治療について出来るだけシンプルな考え方を提示させて頂きたいと思います。また、臨床で役立つ歯周外科手術のポイントについてお話ししたいと思います。さらに、最新の歯周組織再生療法に関する知見を我々の研究データも交え、ご紹介したいと思います。
北島 一
歯周治療の目的は機能回復を果たし、同時にアタッチメントロスの進行を止めることであり、さらなる病状の悪化を防止し、ひいては歯の喪失を免れることにあります。
本講演では、歯周外科に焦点を当て、骨欠損形態による適応術式選択の判断や軟・硬組織のマネージメントのテクニック、そしてとくに歯周組織再生療法は歯周外科において有効な治療オプションと考えており、その術式について動画を用いながら説明いたします。
また重度に進行した歯周病のケースでは矯正、歯冠修復、インプラントによる欠損補綴など包括的な治療が必要となることが多く、それら治療オプションをどのように組み合わせて応用しゴールに到達させるかという戦略について解説したいと思います。

講演内容

三谷 章雄
  1. 歯周病とからだの病気の関係
  2. 歯周治療の流れとは
  3. 何より大事な歯周基本治療
  4. 歯周外科手術のポイント
  5. 最新の歯周組織再生療法
北島 一
  1. 歯周外科;いつ行うか
  2. 切除療法と再生療法
  3. 歯周組織再生療法;成功の鍵
  4. 歯周組織再生療法の術式
  5. 重度歯周病に対する包括的アプローチ

略歴

三谷 章雄
1996年
愛知学院大学歯学部歯学科 卒業
2000年
愛知学院大学大学院歯学研究科修了 博士(歯学)

愛知学院大学歯学部歯周病学講座 助手

2004年
同上 講師
2007年
愛知学院大学在外研究員
(イギリス・グラスゴー大学医学部 客員研究員、2008年8月まで)
2012年
愛知学院大学歯学部歯周病学講座 准教授
2014年
同上 教授
北島 一
1987年
広島大学歯学部卒業
1990年
静岡県磐田市 北島歯科医院開業
2008年
5-D Japan(石川、福西、船登、南先生とともに)発足
日本臨床歯周病学会認定医
OJ(Osseointegration study club of Japan)常任理事
AAP(American Academy of Periodontology)会員

学会活動

三谷 章雄
日本歯周病学会理事・専門医・指導医, アメリカ歯周病学会(AAP)国際会員,日本歯科保存学会理事・専門医・指導医,日本口臭学会評議員・専門医,日本レーザー歯学会代議員・専門医,口腔インプラント学会会員,日本免疫学会会員,日本審美歯科学会会員,日本口腔衛生学会会員,国際歯科研究学会(IADR)会員

最近の文献

三谷 章雄
  1. 今日の治療指針 2016年版−私はこう治療している−, 医学書院, 東京, 2016.
  2. 慢性疾患としての歯周病のアプローチ−患者さんの生涯にわたるQOLに貢献するために−, 医歯薬出版, 東京, 2014.
  3. 臨床歯周病学(第2版), 医歯薬出版, 東京, 2013.
  4. 最新の歯周外科手術をマスターしよう−基本から高度症例の応用まで−, 第一歯科出版, 東京, 2010.
  5. Five-year clinical results for treatments of intrabony defects with EMD, guided tissue regeneration and open-flap debridement: a case series. Journal of Periodontal Research, 50: 123-130, 2015.
  6. Regulation of type 17 helper T-cell function by nitric oxide during inflammation. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS), 108: 9220-9225, 2011.
北島 一
  1. ザ・クインテッセンス 2015 年3 月~ 5 月号連載 歯周組織再生療法の可能性と挑戦;術前診断の着眼点と臨床手技
  2. 別冊 ザ・クインテッセンス YEARBOOK 2016 長期経過症例から学ぶ“炎症と力のコントロール” 組織の反応を見極め最適な治療計画を決定する
  3. 歯界展望 126 巻6 号 2015 年12 月 特集日本の歯科の力 歯周治療における歯周基本治療・メインテナンスの重要性
  4. ザ・クインテッセンス 2008 年6 月~ 7 月号連載 ~TISSUE MANAGEMENT STRATEGIES ディシジョンツリーから診断基準を学ぶ
  5. 一月刊 北島 一 ~ Balance in Periodontics ~ デンタルダイヤモンド社

講演後記

平成28年8月28日に第3回PGCが開催されました。今回は講師に愛知学院歯周病学講座教授の三谷章雄先生と静岡県で開業されている北島一先生をお招きして、「歯周治療そうすればよかったんだ!」という講演をして頂きました。 三谷教授の講演は歯周病の病態から、歯周基本治療、さらにアドバンスな歯周外科手術まで幅広いニーズに答えるような内容でした。
中でも興味深かったのはプラークコントロールについての話で、ブラッシングのテクニックよりも歯周病の病因、病態を患者に教えることのほう大切だということ、さらにプラークコントロールレコードを鵜呑みにせず、プロービングデプスの深い箇所を歯間ブラシで重点的に指導するという事でした。 従来の方法にとらわれず、患者目線の視点をもち臨床を続けられた三谷教授の発想に感銘を受けました。
さらに患者の人生の長さを考えると、動的治療の後のメインテナンス、SPTが1番長い期間患者と関わって行く事になるので、長期的に口腔内の健康を維持するため必要な事を考えて行かなければならないという事を感じました。

北島先生には歯周外科をメインにお話ししていただきました。豊富な症例提示とともに歯周外科の術式を細部まで語って頂き、明日使える臨床へのヒントを得られた先生もたくさんいらっしゃったことでしょう。
再生療法についての内容も多く、Hopelessと診断されるような歯が数年にわたって維持されている症例を見て、歯周病治療の面白さを感じました。

現在インプラントが普及し、早期に抜歯を行い、インプラントを行うケースも少なくない時代になりましたが、症例によっては、可及的に歯を保存し、動的治療のタイミングを先延ばしにするのが、長期的な患者のマネージメントにつながるということ、そしてやはり一番大切なのはメインテナンスに入ってからなのだと二人の先生から学ぶ事ができ、今回のPGCもとても有意義な時間となりました。