近年インプラント治療が身近なものとなり、患者さんは多くの恩恵を受けている反面、プランニングやメインテナンスが疎かになっており、問題を抱えているケースを多く見かけるようになりました。私が卒業した1999 年時点では口腔内にインプラントが入っている患者さんのパノラマを見ることは稀でしたが、時代の波に乗りインプラントブームと呼ばれる時期を経て、現在は約2%の患者さんの口腔内にインプラントが存在している状況です。ただしインプラントに対する不信感がマスコミの報道などで募っていることは間違いなく、インプラントの信頼を回復させるためには患者さんと正しい情報を共有し、歯周病学をベースとした知識を医療サイドは持ち合わせている必要があると考えます。
本日は私がスウェーデンで学んできたことをベースにした歯周/インプラント治療についての話をさせて頂き、歯牙、インプラントともに長期的な視野に立ち健康に機能させるための考えをシェアさせていただこうと思います。
日本臨床歯周病学会/日本歯周病学会/日本口腔インプラント学会/ITIメンバー
平成29年7月2日(日)に愛知学院大学附属病院にて、第1回ポストグラディエートコースが開催されました。
講師にスウェーデンのイエテボリ大学大学院専門医課程を卒業され、ヨーロッパ歯周病専門医・インプラント専門医である、大月先生をお招きして「スウェーデンの歯周病学に基づく臨床 ~歯周病・インプラントからインプラント周囲炎まで~」と題してご講演賜りました。
スウェーデンの治療の多くは科学的根拠をもってサポートされており、さらにナショナルガイドラインが存在します。午前中はスウェーデンにおける歯周病・インプラント治療の考え方についてお話し頂きました。まずインフェクションコントロールについて、その後歯周基本治療の重要性と外科的歯周治療の適応症の見分け方についてお話し頂きました。インプラントを行う際、大掛かりな骨増生や上顎洞挙上術などを避け、インプラントの傾斜埋入・ショートインプラントの使用・カンチレバーの付与によりシンプルにし、治療計画の段階で複雑な治療を避ける必要性や、また歯周病患者はインプラント周囲炎に罹患する可能性が高いのでより厳密なメインテナンスが必須となることを教えて頂きました。
午後からはインプラント周囲病変の基本知識・治療・メインテナンスについてお話し頂きました。5年以上経過にて、インプラント粘膜炎約60%、インプラント周囲炎20%の患者に認められるというシステマティックレビューを見せて頂き身近な疾病だと認識させられました。プラーク除去をみる研究(ガーゼ、超音波、エアーアブレーション、ステンレスブラシ、Er:YAGレーザーで比較)においては生食ガーゼの清掃が最も除去率が高いのに驚きを隠せませんでした。
今回この講演を通して、歯周病のインフェクションコントロールの重要性やインプラント周囲病変等を科学的根拠の基、深く理解できました。貴重な講演を頂いた大月先生に深く御礼申し上げます。