角 保徳 氏
我が国では、2015 年には4 人に1 人が65 歳以上の高齢者になり、世界に類を見ない超高齢社会を迎え、要介護高齢者数は急増している。要介護高齢者への口腔ケアは、口腔疾患や誤嚥性肺炎の予防だけでなく、栄養維持に有用であることが報告され、歯科医師・歯科衛生士によって多くの病院や施設などで口腔ケアの普及への取り組みがなされている。本講演では、歯科医師・歯科衛生士が行う専門的口腔ケアの考え方をベースに、標準化した口腔ケア、専門的口腔ケア、専門的口腔ケアの手技としての『水を使わない口腔ケア』、口腔ケアと併用して要介護高齢者のQOL を高める化粧(整容)療法、周術期の口腔管理等について臨床スライドを中心に解説したい。
植田 耕一郎 氏
1994 年に医療保険導入された摂食機能療法は、20 年以上が経過した今、その需要に応え切れているとは言いがたい状況です。歯科の場合は、摂食機能障害の抽出法、評価法、技術、そして人材と理念の確立が急務といえます。しかし、それらは決して今日まで体系化された歯科医学から逸脱するものでも新規性のあるものでもありません。どのような状況であっても、基礎に忠実な歯科医療を展開していくこと、ただし対象は、脳卒中、認知症、パーキンソン病、神経難病等であるということです。診療所歯科医師としての摂食嚥下リハビリテーションの本質を、さらに超高齢社会の日本の健康について検討します。
角 保徳 氏
客員教授
岡山大学、徳島大学、松本歯科大学、岩手医科大学、東京歯科大学
非常勤講師
東京医科歯科大学、九州大学、鹿児島大学、鶴見大学、松本歯科大学、朝日大学、昭和大学
植田 耕一郎 氏
愛知学院大学歯学部非常勤講師
神奈川歯科大学非常勤講師
奥羽大学客員教授
平成28年9月11日(日)愛知学院大学歯学部楠本学舎にて、第4回ポストグラデュエートコースが開催されました。講師に国立長寿医療研究センター 歯科口腔先進医療開発センター センター長でいらっしゃる角保徳先生と、日本大学歯学部 摂食機能療法学講座 教授でいらっしゃる植田耕一郎先生をお招きし「専門的口腔ケアと摂食嚥下の本質を学ぶ」と題してご講演を賜りました。
午前中は、まず角先生に「専門的口腔ケアと摂食嚥下の本質を学ぶ」をテーマに超高齢化社会の到来における歯科界のパラダイムシフトと専門的口腔ケアの実際についてお話し頂きました。今後の日本は超高齢化社会が継続する事は確実であり、歯科医療はこれまでの健常者型から、口腔機能向上を目指す高齢者型の歯科医療へと転換していく。要介護高齢者の口腔内は多種多様な疾患があり、他職種と連携しつつ口腔ケアを普及させていくことが私たちには求められている。今回の講演ではこれに必要な、1日1回5分で行える標準化した口腔ケアシステムや、専用ジェルを用いた「水を使わない口腔ケア」の手技についてもご紹介頂きました。
午後は植田先生に「歯科が実践する摂食嚥下リハビリテーション ーかかりつけ歯科医が実践する診療所を核にした摂食嚥下リハビリテーションー」と題して歯科における摂食嚥下リハビリテーションの事始めから現在に至るまでをお話頂きました。私たちの診療室にも摂食嚥下リハビリテーションを必要とする方が大勢いる。摂食嚥下リハビリテーションには完全治癒はない。だからこそ、かかりつけ歯科医の存在は重要なものである。私たちにはあまにりも当たり前となっている、口腔相を直視し、触れることができるということがいかに大切で尊いことかを忘れてはならず、相手の小さな変化を見逃さない事、診療室から出来る事を日々続けていく事が大切であると感じました。
今回の講演を通して、これからの超高齢化社会の歯科医療を担う私たちに課せられた使命、他職種連携の中での私たちの役割について理解する事ができました。貴重なご講演を頂いた二人の偉大な先生方に、深く御礼申し上げます。