情報格差によって健康格差が生み出されると言われるようになった時代に、ただ患者さんを待たせるだけの空間でしかない待合室は“もったいない”と思いませんか?従来の業界の常識を疑い、再定義して、新しい商品やサービスが誕生するように、待合室に新しい価値や機能を付与すれば、待合室は超高齢社会において有用な医療資源として生まれ変わります。その生まれ変わりには、歯科用CT やCAD/CAM のような高額投資は必要なく、院長の勇気とスタッフの希望とサムマネーの3 つがあれば十分可能です。
では、なぜ「待合室の再定義」が必要なのでしょうか?団塊の世代のすべてが、後期高齢者になる2025 年を見据えて、持続可能な社会保障制度の確立を図るために、国はいろいろな施策を着々と打ち出してきているからです。健康づくりの政策化もそのひとつです。例えば、健康づくりに励んでもらうきっかけになるように、特定健診(メタボ健診)の数値が改善した人などを対象に公的医療保険の保険料を安くする仕組み作りに着手したり、健康づくりの努力と成果に応じてお得なポイントを獲得できる健幸ポイントプロジェクトの実証実験を産官学連携で始めたりしています。これらの一連の動きに対して、健康保険や国民健康保険の保険者である企業や自治体の関心度は非常に高いのですが、歯科診療報酬の点数に直接関わらないので、無頓着な院長が多いように感じられます。しかし、健康づくりへの企業や自治体からの働きかけやインセンティブが、患者さんの健康意識を大きく変えることは間違いありません。本講演では、自分の健康は自分で守るという意識に目覚めた患者さんの満足度を高めたいと待合室やチェアーサイドで試行錯誤をはじめたDH らスタッフの事例を紹介しながら、待合室をどう再定義し、それに合わせてスタッフの人材育成をどうするかなどを具体的に解説します。歯科医師とスタッフの両者が超高齢社会の歯科について共通認識を持てる内容です。