> 講演後記
【中田 和彦 氏】 「一般歯科医に求められる歯内治療の現在の医療水準とは?」という問いに答えることは、必ずしも容易ではありません。歯内治療領域における近年のトピックスを振り返ってみると、1990 年代の@新世代の電気的根管長測定器、A各種レーザー、Bニッケルチタン(Ni-Ti)製ロータリーファイル、C多目的超音波治療器、DデジタルX線システム、Eマイクロスコープ、F MTA セメント、2000 年代のG歯科用コーンビームCT が挙げられます。ここからわかることは、Ni-Ti ファイルの新製品が毎年のように上市され、根管処置の効率化に大きく貢献しているのに対して、歯内治療用材料については、本邦の認可制度の“壁”などから、MTA セメント以外には何も“発明品”がないことです。しかし、歯内治療に求められる専門知識や技術の本質は、決して変わることはありません。私たち臨床歯科医に今できることは、歯内治療の原理原則に従った診療の実践について再考してみることではないでしょうか? そこで、愛知学院大学歯学部歯内治療学講座と同附属病院歯内治療科診療部での取り組みを紹介し、学術論文によるエビデンス(科学的根拠)に基づく知見なども提示しながら、「研究に立脚した歯内療法」について解説したいと思います。 また、5年前から始まった「自己歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療法」の臨床研究は、本年3月をもって“第一段階”が終了しましたので、その概要についても時間の許す限りご紹介するつもりです。 本講演の内容をみなさまの日常診療に少しでも役立てていただければ幸いです。 【興地 隆史 氏】 NiTi ロータリーファイルの開発、手術用実体顕微鏡や歯科用CT の導入など、歯内療法の器材・術式は著しい進歩を遂げていますが、その中でなお歯内療法の確実な成功を阻む要因として、ケースアセスメント(診断、難易度・リスク評価、および意思決定)の不確実性を挙げることができます。治療の成功を阻む因子の見きわめ、着手の是非やタイミングの検討、適切なストラテジーの選択といった「見立て」の不確実性が、歯内療法の不確実性に大きく関連すると言い換えることができます。 そこで本講演では、ケースアセスメントを縦軸、トラディショナルから最先端までの器材術式を横軸として、歯内療法を成功に導くための要点を整理してお話したいと思います。
【中田 和彦 氏】
【興地 隆史 氏】
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