PGC.Journal 愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコース   愛知学院大学歯学部同窓会

 
日時:平成26年11月16日(日)9:30〜17:00
講師:丸茂 義二氏

> 講演後記

 
 

咬合は臨床で難しいと思われているものの代表である。しかし,それは臨床における観察に基づいた現象の整理が十分にされていないからである。生理的顎機能の個人差とは顎位であり顎運動の違いである。同じ食物を入れた時に,どのように咀嚼するかの個人差である。しかし臨床では,患者はフランスパンが大好きであるとか,俯せで寝るとか,生活習慣の影響が大きく,また患者のおかれた環境からのストレス等の影響も十分に考慮しなくてはならない。補綴物の破壊や,歯周組織の咬合性外傷はこの生活習慣やストレスに大きな影響を受けているといえる。この顎機能の個人差よりも生活習癖の個人差がもつ意味を考えたことがあるだろうか。 補綴物を守るとか,歯周組織を守るということのために咬合様式の目標設定を誤っていないだろうか。いかなるデザインでも個人の不良因子としての悪習慣やストレスを乗り越えることはできないので,全ての問題点が症例を失敗に至らせ,患者の信頼を失う。この咬合の悪因子は,習癖やストレスの様な変更出来るものと異なり,確実に歯や歯周組織・顎堤を蝕む。まして患者の咀嚼を阻害し,患者のQOLを低下させる。この最適なものから逃れた犬歯誘導がもたらす結果が自らの業種の失敗と症例全体の失敗になるとしたら,まさに今学ぶべきは最適な咬合とは何かであろう。歯科医にも,歯科技工士にも,歯科衛生士にも共通した問題点としてこれらについて提起したい。

 
 
  1. 咬合の意義
  2. 咬合の個人差とは
  3. 咬合のエイジングとは
  4. 咬合デザイン
  5. 顎機能と咀嚼
  6. 歯の形態と顎関節
  7. 顎位と咬合の関係
  8. 咬合採得の技
  9. 咬合性外傷と咬合デザイン
  10. 成功する総義歯の咬合
 
 
1980年 日本歯科大学卒業,日本歯科大学大学院歯学研究科補綴学専攻
  1984年 歯学博士取得,日本歯科大学補綴学第二講座助手
  1988年 日本歯科大学補綴学教室講師
  2001年 日本歯科大学付属病院顎関節症診療センター初代センター長
  2004年 日本歯科大学付属病院助教授
  2005年 日本歯科大学東京短期大学教授
  2010年 日本歯科大学名誉教授

 
 
  1. 丸茂義二 高齢者にやさしい歯冠修復・補綴治療のための咬合様式 日本歯科評論社別冊, pp.43〜52,2011.
  2. 丸茂義二  『態癖』が歯列に及ぼす影響からの気づき 小児歯科臨床 Vol.16,No.11:16-27,2011
  3. 丸茂義二 咬合の役割 日本アンチエイジング歯科学会誌 Vol.5 43-48,2012
 
 
平成26年11月16日 第6回愛知学院ポストグラデュエートコースが開催されました。講師は日本歯科大学 名誉教授 丸茂義二先生をお招きし、演題「全力を出しても成功しない理由とは −歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士それぞれの役割から考える−」でご公演いただきました。歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士を合わせて250名を超える受講生で大盛況となりました。
まず咬合のデザインについて、患者の咀嚼の要求を追求することが大切であり、歯科の業界が本当に尊敬され信頼を勝ち得ることは患者自身の咀嚼が上手く機能した時であるとの講演始めの言葉にドキリとさせられました。 歯牙を喪失する理由の殆どが咬合性外傷によるもの、循環障害・血管障害によるものであり、咬合性外傷を如何にコントロールすることが咬合をデザインする上で大切であることを学びました。また循環障害・血管障害については非常に詳しく説明していただきました。沢山の症例写真より、日々の臨床での観察ポイントを教えていただきました。歯肉の血管の走行からの歯石付着の意味、歯牙周囲歯肉の発赤を見極めることにより何が問題となっているのか観察に基づいた現象の理解が大切であることを学びました。またレントゲンから骨髄内の循環障害の見方のポイントや骨髄内で何が起こっているのか画像診断をしっかりすることが大切であることを学びました。
Grindingするための必要な要件に舌位が重要であることを学びました。舌が前方に出ることによって顎機能が改善されること、下顎が前方に出ることを教えていただきました。SLP(sub lingual plate)がクレンチングの防止、顎関節治療、睡眠時無呼吸症候群の治療の可能性について紹介されました。 歯科をどんなに全力を出しても成功しない理由とは・・・常に臨床の中で疑問を持ち歯科以外の視野を持たないと歯科医学は成功しないと強く感銘を受けた素敵な講演会となりました。明日からの臨床に身を引き締めたいと思います。

 

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