PGC.Journal 愛知学院大学歯学部同窓会ポストグラデュエートコース   愛知学院大学歯学部同窓会

 
日時:平成25年6月9日(日) 9:30〜17:00
講師:丸茂 義二氏

> 講演後記

 
 
総義歯だけではないが,補綴物の装着時の調整はストレスの元である。この調整は歯科医一人が『無調整』でやりたいと思っても実現出来るものではない。多くの歯科の現場では暫間被覆冠を入れるのを省略し,支台歯が動くことに対して,歯科技工士が隣接面コンタクトを過剰に盛り上げて製作して,技工物の再製を避けていると聞く。歯科医療と歯科技工を同時に同じ人間がすれば,最小限の作業で技工物を製作し,なおかつ装着時の最小限の調整で済ませるという目標設定が可能であろう。 本当に装着時に義歯の調整をしなくても済むような技工物を製作することが出来るのであろう。もちろん可能である。患者に限らず共通して遵守すべき製作方法と,患者の個人差を認識して製作する部分を理解する事である。また,根本的な問題点として,患者の顎機能の個人差を無視した製作方法としてのChopper義歯と,個人差の大きいGrinder義歯を,印象採得から最終調整まで区分して製作調整にあたらないと失敗することは全くの必然であろう。歯科技工士はChopperを目的とし,歯科医がGrinder義歯を目標にしていたら同床異夢義歯になってしまうであろう。今回はこれらのことについて知識をまとめていきたいと思う。
 
 
  1. 咀嚼の個人差
  2. 咬合の個人差
  3. 顎位・顎運動の個人差
  4. 義歯製作時に反映するべきこととは
  5. 個人差のない義歯製作部分
  6. 顎機能を実現する
 
 
1954年 5月21日 群馬県生まれ
  1980年 日本歯科大学卒業,日本歯科大学大学院歯学研究科補綴学専攻
  1984年 歯学博士取得,日本歯科大学補綴学第二講座助手
  1988年 日本歯科大学補綴学教室講師
  2001年 日本歯科大学付属病院顎関節症診療センター初代センター長
  2004年 日本歯科大学付属病院助教授
  2005年 日本歯科大学東京短期大学教授
  2010年 日本歯科大学名誉教授
 
【所属】
日本補綴歯科学会 認定医 指導医、日本顎関節学会 認定医 指導医、慢性疼痛学会、自律神経学会、米国咬合学会、米国補綴学会、アジア顎機能障害者学会

 
 
  1. 丸茂義二他    人工歯の形態評価に関する研究 第1報 嵌合時の頬舌方向について 日本歯科技工学会雑誌,Vol.30 No.2 91-97,2010
  2. 丸茂義二他    人工歯の形態評価に関する 研究 第2報 嵌合時の近遠心方向について    日本歯科技工学 会雑誌,Vol.30 No.2:98-103,2010.
  3. 丸茂義二  高齢者にやさしい歯冠修復・補綴治療のための咬合様式    日本歯科評論社別冊,  pp.43〜52,   2011.
  4. 丸茂義二    『態癖』が歯列に及ぼす影響からの気づき    小児歯科臨床,Vol.16,No.11:16-27,2011
  5. 丸茂義二    咬合の役割    日本アンチエイジング歯科学会誌 Vol.5 43-48,2012
 
 
平成25年6月9日、愛知学院大学歯学部楠元学舎図書館大講堂にて、第1回ポストグラジュエートコースが開催されました。講師に丸茂義二先生をお招きして『調整いらずの総義歯を目指して』ー原則を守ってーと題してご講演賜りました。
まず咀嚼,咬合,顎位、顎運動の個人差を解説されました。
その知識を繰り返しちりばめながら、総義歯製作の手ほどきは進行しました。
義歯製作時に患者さんがどのような咀嚼を行うか、咬合平面の角度、下顎頭の形態や胸鎖乳突筋の走行、日常の食事内容など多岐にわたって診査します。
スタディモデルの印象前からChooper義歯とGrinder義歯を区別して製作し始めます。
全てを配慮の元に個人トレーを設計し、最適な印象材を用いて、義歯の機能時がどれくらいの形態が必要か印象圧を考え最終印象に移行します。
咬合採得では、義歯が入った時点で顎位がどのようになって機能出来るか推定して記録します、この際に用いられる咬合床には抜歯後時間が経過し、失われた歯と歯周組織の回復を適正にするノウハウが詰め込まれております、下顎の顎堤に忠実に下顎蝋堤を製作し、上顎蝋堤のみ軟化するようにして、天然歯列だった頃を再現しています。
ゴシックアーチトレイサーを用いて患者さんの最後退位と現在のタッピングポイントを確認することで、左右の顆頭のそれぞれが咀嚼時にどのように機能しているか評価します。
蝋義歯試適時には、咬合床から人工歯を配列し、研磨面の歯肉形成をしたことで顎位が変わることを最小限に抑える様にし、基本的顎運動、咀嚼などの機能運動、発音などそれぞれにおいて動的試適、機能的試適をクリアーします。
重合操作においては、便宜的なワックス使用しないで埋没重合します。
完成した義歯は蝋義歯試適後とほとんど形態が同じです。患者さんのマイナス評価をなくしプラス評価を与える喜ばれる総義歯です。天然歯列で持っていた審美性と機能性が実現されております。
受講生はみな明日から再び自分の臨床,技工の腕前を上げ、知識と経験と技術を追求することを心に誓っておりました。

 
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