【第1回報告】

 
内山 茂先生


平成15年5月18日愛知学院大学歯学部楠元学舎にて第1回 ポストグラデュエートコースが開催されました。

講師に内山 茂先生をお招きし、「PMTCとプリマリーケア -歯科疾患の本質に迫る- 」という演題でご講演を賜りました。200人を越える受講者が集まり、講演は大盛況でした。
 プライマリケアとは何か?プライマリケア医としてPMTCをどのように応用するのか?など歯科医療全体の動向や問題点に着目しPMTCの実践的なところまで臨床例を中心に講演をして頂きました。その中のKey Wordをいくつか取り上げたいと思います。
【プライマリーケア】
 「プライマリーケアとは個人や家族が最初に接する保険医療(ヘルスケア)システムであり、この中で医師は基本的なサービスを提供し、医療に関する看護婦その他のチームを上手に調整しつつ、突発した病気はこれを適切にさばいて、患者の安全を期する。また、個人や家族の日常生活に連続的に配慮し、高い健康レベルが保てるように教育し生涯続く慢性病患者、その他ハンディキャップのある者に対しては、それを背負いながら強く生きるように指導し、援助すること。」
 つまりプライマリケアとは個人およびその家族のよくある疾患の治療にあたり、全身疾患や生活との関わりの中で予防・ケアを行っていく地域医療サービスである。
【プライマリーケアの役割分担】
 プライマリーケアでは歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、歯科助手などのチームアプローチが大切であり、医療的ケア、予防・管理ケア、看護的ケア(苦痛緩和、精神的援助、自立とQOL獲得のための行為)の3つに役割分担される。医療的ケアは歯科医師が中心となり、予防・管理ケアや看護的ケアは歯科衛生士が中心となるべきである。またその中でPMTCは最も重要なものとなる。
【PMTCの実際】
 PMTCのステップとしては 1.プラークの染め出し 2.研磨材の注入または塗布 3.隣接面の清掃・研磨 4.頬舌側面・咬合面の清掃・研磨 5.歯面の洗浄(歯周ポケット内の洗浄)6.フッ化物塗布 が基本的ではあるが必ずしもすべてを行う必要はない。しかしPMTCの中で5の洗浄は非常に重要であり必ず行うべきである。
【口腔乾燥症】
 口腔乾燥症を起こす可能性のある代表的な薬物としては抗高圧剤、抗ヒスタミン剤、精神安定剤、抗うつ剤が挙げられる(詳細は「唾液-歯と口腔の健康」(河野正司監訳/医歯薬出版1997)。対処法としては医師との相談の上、このような薬物の処方についての再検討や唾液分泌促進剤、口渇緩和スプレー(ウエットケア、ウエットケアレモン:キッセイ薬品)の使用がある。しかしもっとも重要なのは患者の口腔内のPMTCを確実に行っていくことである。
 このようなキーワードを中心にコンピュータプレゼンテーションを大いに活用し、受講者を飽きさせることなく講演をして頂きました。その中でも「歯根面のSRPを行う際にセメント質を出来るだけ残すことが出来れば、歯槽骨の再生の可能性が高くなる。」「未病(疾病予備群)の人々に対して健康支援するのはプライマリケア医である。」という言葉を強調しておられました。ご講演を通して我々臨床家に改めて活力とやりがいを与えて下さった内山 茂先生にこの場をお借りして厚く御礼を申し上げ、報告を終ります。

30回生 須崎 明

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